ぺんぎん先輩の歌姫鑑賞

邦楽女性歌手のレビューを遺書・備忘録代わりに書いていきます。個人の感想です。あなたのオススメ教えて下さい。

■「根も葉もRumor」/ AKB48

■「根も葉もRumor」/ AKB48 評価:★★★★

 

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 AKB48 1年半ぶりとなるシングルはAKB48メンバーのみ参加、そして史上最高難度のダンスナンバーであった。総選挙やNGTのゴタゴタあたりから”AKBグループ”という纏まりは崩れかけていたので、「サステナブル」の頃あたりでAKBメンバーのみでやっておけば…といった思いもある。

 今回は”ロックダンス”というジャンルのダンスに挑戦しているが、今までも「UZA」「NO WAY MAN」など、”最高難度のダンス!”という触れ込みは何度もあった。しかし、オタクたちは難しいダンスにはそこまで興味ないし、ライブでもあまり盛り上がれないし、仮に難しかろうが完成度がそこまで高くなければそこまで評価されない。今まではあまりこの戦法が功を奏したことはなかった。

 ただ、今回はファンにとっても一般層にとっても、運営の企みは大いに成功したと言っていいのではなかろうか。個人的に歌詞は煮え切らない部分があるが、楽曲は純粋に聴いていて楽しいし、揃っているダンスも見栄えする。娘(いないけど)の学園祭を観に来たような気分だろう。今年のAKB単独コンサートもそうであったが、”分かりやすく努力を見せよう”とするコンセプトは、本来のAKBのコンセプトであるように思う。それがAKBメンバーのみであることから、さらに一体感を増しているように思う。選抜メンバーの是非は個人的にはよく分からないが、スキャンダルで一時活動を自粛していた横山結衣をフロントに持ってくるなど大胆な試みをしている。批判も受けそうだが、実力でこれを黙らせるのはとてもカッコよかった。彼女や本田仁美、下尾みうなどの実力者なしでは、この楽曲もここまで評価されなかっただろう。

 アイドルらしさ、真面目さを体現している岡田奈々、小栗有以、村山彩希や、アラサーながら必死で喰らいつく柏木由紀横山由依など…AKB48はまだまだ戦えることを十分に示してくれた。そして個人的に最も良かったのは山内瑞葵さんである。しっかりダンスをこなしつつ抜群の笑顔と、時折不思議なポーズで主張する様が愛らしくてたまらない。センターだった前作「失恋、ありがとう」よりも彼女の魅力が感じられるのではなかろうか。

 

youtu.be公式MVよりもやはりこの定点動画のほうがより良さが伝わるだろう。

 

 

 ただ、不満も多数ある。ひとつはカップリング曲のヤッツケ感がいただけない。ただでさえ年間に発表する楽曲が数年前に比べて激減しているのだから、もう少し楽曲のクオリティを上げていただきたい。昨年度の配信シングル「遠くにいても」は良い曲であるが、今更これを共通カップリングにするのはヤル気が無さすぎる。横山由依の卒業楽曲以外はMVもないし…

 それから、やはりAKB48、48グループとしてのワクワクするようなイベント、仕掛けがなくなってしまったように思う。(もちろんコロナ禍だからと言われればそれまでだが)例えば歌唱力No.1決定戦も第4回目が開催となるが、そろそろメンバーも代わり映えせず、マンネリ化してきている。そもそも今年歌唱力選抜で今年CDを出したこと、どれくらい認知されてるんだろう…

 

 そして残念ながら2021年も紅白を逃してしまったが、残ってくれているヲタ達や、かつてファンだった層などに向けてぜひこれからも頑張ってもらいたい。次作は少しハードルが上がってしまったような気がするが、決してダンスに拘らなくていい。丁寧でハイクオリティな内容であれば、自然と評価はついてくるだろう。

 

 

■ 音楽雑記「小松未歩は今どこで何をしているのか」

君は小松未歩を知っているか。

 

名探偵コナン主題歌「謎」をはじめ、30代以上であれば名前を聞いたことぐらいはあるだろう。公式プロフィールもどこまでが真実か分からず、MV以外で公の場に姿を現したことがないことから、未だに「小松未歩 実在」なんて検索されていたりする。

 

お世辞にも上手とは言えない歌唱力ながら、圧倒的なメロディの良さと楽曲の完成度、声質・世界観の良さで多くの人に支持された。2006年にベストアルバムリリース、2009年にブログを更新して以降、明確なアナウンスがないまま活動休止に入る。しかし、GIZA系列に所属していたアーティストは同様にフェードアウトする者も多かったため、暗黙の了解的な形で、小松未歩は実質引退と世間は受け入れたであろう。

 

そして2021年、小松未歩がデビューしてから24年、最後のブログ更新から12年、少しGIZA界隈に動きがあった。

 一つは同じGIZA系列に所属していた「愛内里菜」が、芸能プロデューサーによる度重なるセクハラで精神的な苦痛を受けたとして、損害賠償を求める訴訟を起こしたことである。愛内里菜GIZA系列では珍しく(?)2010年に歌手活動引退をしっかりとアナウンスしていたが、2015年に別名義で復帰、そして今年度上記の訴訟を起こし、愛内里菜名義で再始動することになった。

 次に、これまたGIZA系列に所属し探偵学園Qの主題歌でデビューした「岸本早未」である。彼女もまた突然ブログの更新が途絶え、そのままフェードアウトしていたのだが、今年になってYoutubeに動画を投稿し、GIZA側から契約解除(5年契約をしていたが、契約期間1年を残したまま)があったことを報告した。確かに岸本早未のセールス状況は決して良いものではなかったであろうからこれは仕方ない気もするが、だったらハッキリと引退宣言する場くらい設けてあげればいいのにと思う。

 もちろんこれらは小松未歩とは直接関係があるわけではないが、小松未歩も彼女らと同時期の00年代に活躍した女性歌手だけに、なんだか思いを馳せてしまう。

 

 さて、ここからが本題だ。2021年4月、音楽プロデューサーの長戸大幸が、FM滋賀の音楽番組『OLDIES GOODIES』にて、小松未歩のデビューシングル「謎」と15thシングル「愛してる...」のデモテープを公開したのだ。当然デモなので荒削りながら、「謎」という楽曲の持つ魅力、哀愁、迫力は既に感じられる。

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さらに9月、同じラジオ番組にて今度は「チャンス」のデモが流されたのだが、これが衝撃的だった。イントロがZARD「負けないで」なのだ。聞き馴染みのあるZARDの名曲のイントロから違和感なく「チャンス」のAメロへと入っていく。どうやら「負けないで」をモチーフに作られたらしい。だから何だと言われればそれまでであるが、不思議な感覚に陥ってしまった。

 

youtu.be

 今更こうしてデモを掘り起こしてあーだーこーだ言うのはもしかしたらナンセンスなのかもしれない。知らないままのほうが素敵だったこともあるのかもしれない。けれど、令和になっても小松未歩のことを考え、楽曲を語り続ける人がいることはとても良いことなのだと思う。

ちなみに、近しかったプロデューサーでさえ彼女が今どうしているのかは『謎』らしい。なので彼女がまた活動を再開するなんてことは夢にも思っていない。ただ、令和の時代にこうして小松未歩に関する新たなことを少し知れただけでも嬉しくなるのである。

 

 

 

■ 今日の1曲「雑感」 / 柴田聡子

■「雑感」 / 柴田聡子

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約1年ぶりの新譜となる配信限定作品。

サウンド的に派手さはないものの、これまでの柴田聡子らしさも感じさせる詩的な表現を交えつつ、淡々とした独白のように楽曲が展開してく。荒涼とした雰囲気を感じさせながらも、その歌声は少しずつ熱に帯びていく。

 

「雑感」という曲は、2020年6月に作りました。新しい曲が作りたかった。その時期に考えていたことは、もう会えない友達や家族に、どうしたらいいかな?と、誰も知らないことを片っぱしから聞いてみたい、ということと、今会うことのできる好きな人にどうやったら会えるのか、ということだったと思います。

(ご本人のコメントより:公式ウェブサイト

 

 作品として仕上げるまでに相当の時間をかけていることからも、本人のこの楽曲への並々ならぬ想いが感じられる。昨年度のコロナ禍、彼女だけでなく人々は様々なことを考えたことだろう。そんな葛藤を、現実もしくは心象風景を交えながら、切り取っていく。

 

 正直、書いてあることの大半はよく分からない。よく分からないけれど、柴田聡子の歌詞はすべて理解できなくてもいいのだと、いつも感じさせる。けれど、今回散りばめられているのは”大人になること”を思わせるフレーズだ。

毎日のせいで涙を流す暇もないだけです

頼りにしていた人が死んで途方に暮れている

積み木を崩さないように見ていないとこで押さえている

 ように見せかけていつだって離せるのは私です

大人になって車やバイクにも乗れるようになる。行きたいところに行けるようになる。けれど、大切な人を失ったり、忙しい日々に悲しみの感情も紛らせてしまう。しっかり立ってるように見えて、必死で支えてるんだよ。いつだって崩れようと思えば、崩せてしまうんだよ、と。ですます調でまとまりなく吐き出していく様は、確かに”雑感”である。

 それでも楽曲の最後では霧の中を抜け、行きたかった場所へたどり着く。これからの自分自身を鼓舞する、強い決意表明の歌でもあろう。

 

www.youtube.com

ちなみに英語のタイトルは「Understood」。彼女は一体何を”理解した”のだろうか。

■「THE PUFFY」/PUFFY

■「THE PUFFY」/PUFFY 評価:★★★★

 

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01.エッサフォッサ
02.Pathfinder
03.CHOEGOIS
04.パフィピポ山 
05.すすめナンセンス 
06.罪深いかもしれない
07.COCO HAWAII
08.冒険のダダダ
09.陽の当たる丘
10.ALWAYS

 

 配信シングルやベストアルバムはちょこちょこリリースしていたものの、約10年ぶりとなるオリジナルアルバム。日本で活動再開してからは奥田民生のみならず和洋問わないバラエティ豊かな面々にプロデュースされてきたが、今作も同様の手法をとっている。

 PUFFY×ユニコーン楽曲の往年のユルさを感じさせつつも明るい応援歌である「エッサフォッサ」をはじめ、ELLEGARDENプロデュースの本格的な洋楽ロック風の「Pathfinder」、作詞:さくらももこ 作曲:織田哲郎で良くならないはずがない「すすめナンセンス」など、一曲一曲の気合いの入り方や楽曲のクオリティは折り紙付きである。

 

 しんみりとしたバラード「罪深いかもしれない」、ジャジーな「ALWAYS」など多様性に富んだ曲が多く、10曲というコンパクトに纏まっているのも良い。どんな楽曲でもPUFFYらしさを残しつつ器用に歌いこなすのは流石である。

 

 特にバカリズムが作詞を担当した「陽の当たる丘」は名曲。1曲まるまる物件を探すという異色な歌詞ながら、ポップなメロディと「シャワーの水圧以外完璧♪」というサビがなんとも素敵である。もちろんデビュー当時から白のパンダをどれでも全部並べていたりしたので、今更この程度の歌詞で驚くこともないのかもしれない。そして”物件探し”というテーマには、これから始まる新生活というワクワク感がつきものだ。だからこそ最後に物件が決まったときは妙な感動が待っている。(言い過ぎ?)

 

そんなこんなで絶賛が多くなったが、惜しむらくはベスト盤にも収録した「パフィピポ山」、「COCO Hawaii」、既に配信から時間が経過していた「冒険のダダダ」「すすめナンセンス」の代わりにオリジナル楽曲をもう少し聴きたかった点だろうか。マイペースでも良いのでぜひ今後とも音楽活動は継続してもらいたい。

 

 

youtu.be

ユニコーンとしてのPUFFYとのコラボは初らしいが、実家のような安心感である。

レビュー記事一覧(随時更新)

Cocco

ブーゲンビリア
「クムイウタ」    ★名盤
ラプンツェル」 ★名盤
「サングローズ」
ザンサイアン
「きらきら」
エメラルド」 ★名盤
「プランC」
「アダンバレエ」
スターシャンク」 ★名盤

クチナシ

 

GARNET CROW

「first soundscope ~水のない晴れた海へ~」 ★名盤

「SPARKLE ~筋書き通りのスカイブルー~」 ★名盤
「Crystallize ~君という光~」 ★名盤
「I'm waiting 4 you」 ★名盤
「THE TWILIGHT VALLEY」
「LOCKS」
「STAY ~夜明けのSoul~」
「parallel universe
「メモリーズ」
「Terminus」

 

■ LOVE PHYCHEDELICO

「LOVE YOUR LOVE」

 

moumoon

「15 Doors」

「No Night Land」

「PAIN KILLER」

「LOVE before we DIE」

「It’s Our Time」

「Flyways」

「NEWMOON」

 

Perfume

Perfume~Complete Best~」
「GAME」 ★名盤
「⊿」 ★名盤
「JPN」
「LEVEL3」
「COSMIC EXPLORER
「Future Pop」

 

PUFFY

THE PUFFY

 

school food punishment

「school food is good food」
air feel,color swim」
「Riff-rain」 ★名盤
「amp-reflection」 ★名盤
「Prog-Roid」

 

■ siraph

「siraph」

 

SeanNorth

「Story Neverend」

「HOME」
「LIFE O.S.T.」

 

the brilliant green(Tommy feburuary6 / Tommy heavenly6

the brilliant green

「TERRA2001」

「Los Angeles」

「THE WINTER ALBUM」
「BLACKOUT」

 

Tommy february6
「Tommy airline」
「TOMMY CANDY SHOP ♡ SUGAR ♡ ME」

 

Tommy heavenly6
「Heavy Starry Heavenly」
「I KILL MY HEART」
「TOMMY ♡ ICE CREAM HEAVEN ♡ FOREVER 」

 

ポルカドットスティングレイ

「何者」

 

 

安藤裕子

「chonicle.」
「JAPANESE POP」
「勘違い」
「グッド・バイ」
「あなたが寝てる間に」
Kongtong Recordings

 

鬼束ちひろ

 

 

熊木杏里

「殺風景」
「無から出た錆」 ★名盤
「風の中の行進」
「私は私をあとにして」
「ひとヒナタ」 ★名盤
「はなよりほかに」
「光の通り道」
「白い足あと」
「生きているがゆえ」
「飾りのない明日」
「群青の日々」
人と時」 評価:★★★★
「なにが心にあればいい?」

 

小松未歩

「謎」
小松未歩 2nd ~未来~」 ★名盤
小松未歩 3rd ~everywhere~」
小松未歩 4 ~A thousand feelings~」 ★名盤
小松未歩 5 ~source~」
小松未歩 6th ~花野~」
小松未歩 7 ~prime number~」 ★名盤
小松未歩 8 ~a piece of cake~」

 

■ 柴田聡子

「しばたさとこ島」
「いじわる全集」
「柴田聡子」
「愛の休日」
「がんばれ!メロディー」
「スロー・イン」

 

 

柴田淳

オールトの雲
「ため息」
「ひとり」
「わたし」
「月夜の雨」
「親愛なる君へ」
ゴーストライター
「僕たちの未来」 ★名盤
「あなたと見た夢 君のいない朝」
「バビルサの牙」
「私は幸せ」
「ブライニクル」
蓮の花がひらく時

 

竹仲絵里

「ペルソナ」
「Garden」 ★名盤
「Sang」
「contrast」

「Motivation」

 

 

 

湯川潮音

「クレッシェンド」
「濡れない音符」
セロファンの空」
「漂うものたち」

 

吉澤嘉代子

箒星図鑑」
「東京絶景」
「屋根裏獣」
「女優姉妹」

 

 

■ 音楽雑記

小松未歩は今どこで何をしているのか

 

■ 今日の1曲

ふくろうず「ビューティフル」

鬼束ちひろSign

柴田聡子「雑感

吉澤嘉代子「鬼」

■「蓮の花がひらくとき」 / 柴田淳

■「蓮の花がひらくとき」 / 柴田淳 評価:★★★☆

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1. はじまりはじまり
2. ループ
3. ハイウェイ
4. 紫とピンク
5. 真っ白な真っ黒
6. 私が居てもいい世界
7. シャンデリアの下で
8. 珈琲の中
9. 可愛いあなた
10. エンディング

 

アルバムの構成や内容自体は前2作「私は幸せ」「ブライニクル」と大きくは違わないため、この2作を気に入っているかどうかで評価は分かれるだろう。

ハードロック調の「はじまりはじまり」は個人的ベストトラック。アルバムのイントロかと思わせておいて、『悪夢のはじまりはじまり』とは…柴田淳さんもなかなか拗らせてるなあ…。「理由」「Multiverse」といった近年のダークなオープニングをさらに凌駕する1曲。すごく良い。

「ループ」「私が居てもいい世界」というダークなバラードをしっかり抑えつつ、
ストレートなバラード曲「紫とピンク」「可愛いあなた」、夢と現実の狭間にいるような甘苦い歌詞世界とメロディが大人っぽく響く「珈琲の中」、まるでこのまま人生すら終えてしまいそうなほど達観しているラストのバラード曲「エンディング」など、柴田淳らしい楽曲のクオリティと世界観は健在である。

ただ、問題点のひとつは多くの方が指摘されている通り、歌詞である。これは聴き手の好みとしか言いようがないが、彼女と同じような境遇の人間、すなわち、これまで恋愛で多くの失敗を経験したり、チャンスを逃してしまったり、誰かと結ばれることないまま年を重ねてしまった…そんな人間にはどうしようもなく”刺さる”だろう。

「可愛いあなた」では去っていく相手を一方的に想い続けているし、「エンディング」は別れた相手の幸せを願ったあと、”君と出会えた僕は世界一幸せだ”と自分に言い聞かせる。感情や想いが剥き出しすぎて、時に聴いていることが辛くなってしまう。アルバム「私は幸せ」以降、こういった傾向が顕著である。

 今作のもう一つの問題は楽曲の多様性であるが、「ハイウェイ」「シャンデリアの下で」といった、それぞれボサノバ、ジャズの要素を感じさせるサウンド的に派手な楽曲が個人的にはいまいちハマらなかった。

 ここ最近は聴き手も彼女自身も苦しめるような作風が続いているので、少し印象の違った楽曲も期待したい。

 

■「スロー・イン」 / 柴田聡子

■「スロー・イン」 / 柴田聡子  評価:★★★★

 

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1.変な島 

2.いやな日 

3.友達 

4.どうして

 

3rdアルバム『柴田聡子』、4thアルバム『愛の休日』、5thアルバム『がんばれ! メロディー』と、様々な趣向を凝らして新境地を切り開いてきた柴田聡子。そんな彼女が弾き語りやストリングスの必要最小限な音だけで作り上げたアコースティック感溢れる作品。

 

文学的な歌詞、ポップさ満載のメロディといった柴田聡子の良さをギュッと煮詰めた作品である。今までのフルアルバムだとどうしても数曲はイマイチな曲もあったが、今作は4曲だけということもあって全曲良い。

「変な島、変な島」というフレーズが耳に残る1曲目はとにかくキャッチーだし、好きな人ともっと特別な場所(山小屋)で会いたかったという「いやな日」は歌詞が可愛い。「友達」という存在に独特な視点で切り込んでいく3曲目は、友達同士の微妙な距離感と、それでも友達でよかったという想いを綴りながら、少しずつ盛り上がっていく。

 

そしてなんといっても4曲目の「どうして」は名曲中の名曲である。同棲する男女二人、女性側心の機微や情景描写がとにかく素晴らしい。

『どうして見下ろすんじゃなくて しゃがんで見てくれたの』

『どうして一人にしてくれるの 私は泥棒かもしれないのに』

誰もが抱いたことがあるけど、生きていれば消えてしまう気持ちを言葉で的確に捉えて表現している。すごく感覚的なんだけど、ちゃんと計算されているようにも思う。最後には部屋に部屋に薄西日が射してエンディングを迎えるのだが、ひとつの小説を読みえ終えたような感動すら待っている。

 

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