■ 音楽雑記「小松未歩は今どこで何をしているのか」
君は小松未歩を知っているか。
名探偵コナン主題歌「謎」をはじめ、30代以上であれば名前を聞いたことぐらいはあるだろう。公式プロフィールもどこまでが真実か分からず、MV以外で公の場に姿を現したことがないことから、未だに「小松未歩 実在」なんて検索されていたりする。
お世辞にも上手とは言えない歌唱力ながら、圧倒的なメロディの良さと楽曲の完成度、声質・世界観の良さで多くの人に支持された。2006年にベストアルバムリリース、2009年にブログを更新して以降、明確なアナウンスがないまま活動休止に入る。しかし、GIZA系列に所属していたアーティストは同様にフェードアウトする者も多かったため、暗黙の了解的な形で、小松未歩は実質引退と世間は受け入れたであろう。
そして2021年、小松未歩がデビューしてから24年、最後のブログ更新から12年、少しGIZA界隈に動きがあった。
一つは同じGIZA系列に所属していた「愛内里菜」が、芸能プロデューサーによる度重なるセクハラで精神的な苦痛を受けたとして、損害賠償を求める訴訟を起こしたことである。愛内里菜はGIZA系列では珍しく(?)2010年に歌手活動引退をしっかりとアナウンスしていたが、2015年に別名義で復帰、そして今年度上記の訴訟を起こし、愛内里菜名義で再始動することになった。
次に、これまたGIZA系列に所属し探偵学園Qの主題歌でデビューした「岸本早未」である。彼女もまた突然ブログの更新が途絶え、そのままフェードアウトしていたのだが、今年になってYoutubeに動画を投稿し、GIZA側から契約解除(5年契約をしていたが、契約期間1年を残したまま)があったことを報告した。確かに岸本早未のセールス状況は決して良いものではなかったであろうからこれは仕方ない気もするが、だったらハッキリと引退宣言する場くらい設けてあげればいいのにと思う。
もちろんこれらは小松未歩とは直接関係があるわけではないが、小松未歩も彼女らと同時期の00年代に活躍した女性歌手だけに、なんだか思いを馳せてしまう。
さて、ここからが本題だ。2021年4月、音楽プロデューサーの長戸大幸が、FM滋賀の音楽番組『OLDIES GOODIES』にて、小松未歩のデビューシングル「謎」と15thシングル「愛してる...」のデモテープを公開したのだ。当然デモなので荒削りながら、「謎」という楽曲の持つ魅力、哀愁、迫力は既に感じられる。
さらに9月、同じラジオ番組にて今度は「チャンス」のデモが流されたのだが、これが衝撃的だった。イントロがZARDの「負けないで」なのだ。聞き馴染みのあるZARDの名曲のイントロから違和感なく「チャンス」のAメロへと入っていく。どうやら「負けないで」をモチーフに作られたらしい。だから何だと言われればそれまでであるが、不思議な感覚に陥ってしまった。
今更こうしてデモを掘り起こしてあーだーこーだ言うのはもしかしたらナンセンスなのかもしれない。知らないままのほうが素敵だったこともあるのかもしれない。けれど、令和になっても小松未歩のことを考え、楽曲を語り続ける人がいることはとても良いことなのだと思う。
ちなみに、近しかったプロデューサーでさえ彼女が今どうしているのかは『謎』らしい。なので彼女がまた活動を再開するなんてことは夢にも思っていない。ただ、令和の時代にこうして小松未歩に関する新たなことを少し知れただけでも嬉しくなるのである。