■今日の1曲「closer」/ GARNET CROW
■「closer」/ GARNET CROW
GARNET CROWの「closer」という曲について書きたくなったので、ここに記しておく。
GARNET CROWのラストアルバムとなった10thオリジナルアルバム「Terminus」。その後のベストアルバムに「バタフライ・ノット」という新曲も収録はしているが、オリジナルアルバムを軸に活動してきた彼らだけに、今作の最後を飾る「closer」こそがGARNET CROWの最後の曲なのではないかと個人的には考えている。
アルバム自体は「trade」などの秀逸な楽曲もありつつ、楽曲の質の差が激しい作品であった。長年活動してきただけあり、過去の楽曲と似た曲もどうしても増えてきていたように思う。この「closer」という楽曲もサラッと聴き流すとよくあるバラードのように感じるのだが・・・
注目すべきは詞の世界観だろうか。GARNET CROWの作詞を担ってきたAzuki七は、どちらかというと「生死」を区別しない死生観を持っていたように思う。
大切なモノ傍に在る方がいい
いつか 実体なくなる(ぼくらきえる)ならなおさら
与えられた期限(とき)を愛しいモノで埋め尽くすように
何処を切り取っても……
「君 連れ去るときの訪れを」(4thアルバム「I'm waiting 4 you」より)
お互いにいつか死別することを受け入れ、だからこそ今の幸せを大切にしていこう…ということを、そして魂はまたどこかで巡り会うだろう…ということを、GARNET CROWは繰り返し歌ってきたように思うのだ。それが今回の「closer」ではどうだろう。
消え行くものの彼方にすべてが出逢えるなら こんなに寂しいのはなぜかな
分かち合うことですべてが光になるのなら この暗闇はなにかな
今まで受け入れ、覚悟してきたはずの別れがこんなにも辛いものだったなんて。これまで力強い楽曲を歌ってきたGARNET CROWが、とても弱い、人間らしい部分を見せているのである。”涙流さぬよう遠回りする道”というフレーズは否が応でも「廻り道」の歌詞を思わせるが、その「廻り道」で感じられた前向きさが、この「closer」では消えてしまっている。だからこそ、夕暮れの木立に飛び去る影にまで期待を抱いてしまう。次の世界ではなく、この世界でまた君に会いたいと。
そして、もうひとつGARNET CROWが絶えず発信し続けたメッセージは、”愛は与えるもの”ということではないだろうか。
何かを求めるとか 形あるものじゃなく
ただ好きでいるそんな風にいれたらいいなって思う
「忘れ咲き」(4thアルバム「I'm waiting 4 you」より)
愛されることや、相手に届くかどうかではなく、ただ自分が想い続けることの尊さを様々な楽曲で歌ってきたのだ。ところが今回は冒頭から、”今をどんな風に生きてゆくとしても届かないけど” という、らしくない弱さを見せているのだ。
GARNET CROWが最後に見せたこの”人間らしい部分”と、バントの解散という事象が合わさり、この曲は過去の楽曲にも匹敵する名曲になったように思う。