■ 今日の1曲「雑感」 / 柴田聡子
■「雑感」 / 柴田聡子
約1年ぶりの新譜となる配信限定作品。
サウンド的に派手さはないものの、これまでの柴田聡子らしさも感じさせる詩的な表現を交えつつ、淡々とした独白のように楽曲が展開してく。荒涼とした雰囲気を感じさせながらも、その歌声は少しずつ熱に帯びていく。
「雑感」という曲は、2020年6月に作りました。新しい曲が作りたかった。その時期に考えていたことは、もう会えない友達や家族に、どうしたらいいかな?と、誰も知らないことを片っぱしから聞いてみたい、ということと、今会うことのできる好きな人にどうやったら会えるのか、ということだったと思います。
(ご本人のコメントより:公式ウェブサイト)
作品として仕上げるまでに相当の時間をかけていることからも、本人のこの楽曲への並々ならぬ想いが感じられる。昨年度のコロナ禍、彼女だけでなく人々は様々なことを考えたことだろう。そんな葛藤を、現実もしくは心象風景を交えながら、切り取っていく。
正直、書いてあることの大半はよく分からない。よく分からないけれど、柴田聡子の歌詞はすべて理解できなくてもいいのだと、いつも感じさせる。けれど、今回散りばめられているのは”大人になること”を思わせるフレーズだ。
『毎日のせいで涙を流す暇もないだけです』
『頼りにしていた人が死んで途方に暮れている』
『積み木を崩さないように見ていないとこで押さえている
ように見せかけていつだって離せるのは私です』
大人になって車やバイクにも乗れるようになる。行きたいところに行けるようになる。けれど、大切な人を失ったり、忙しい日々に悲しみの感情も紛らせてしまう。しっかり立ってるように見えて、必死で支えてるんだよ。いつだって崩れようと思えば、崩せてしまうんだよ、と。ですます調でまとまりなく吐き出していく様は、確かに”雑感”である。
それでも楽曲の最後では霧の中を抜け、行きたかった場所へたどり着く。これからの自分自身を鼓舞する、強い決意表明の歌でもあろう。
ちなみに英語のタイトルは「Understood」。彼女は一体何を”理解した”のだろうか。